企業の水リスク(17)気候変動によってなくなる土地

地球上からなくなってしまう国

地球上の水の約97.5%は海水で、淡水(真水)は約2.5%しかありません。このうちの淡水の大部分は、南極、北極などで凍っています。

地球の温度が上昇すると、この氷が融けはじめます。北極や南極にある氷も、広い範囲で失われつつあります。北極海の氷が失われると、ホッキョクグマなど北極海に棲む動物は棲む場所を失います。

地球の海面の水位は、1901 ~ 2000年の100年間で17㎝上昇しました。その原因の1つは、南極やグリーンランドなど陸地にある氷が融けだしていることです。もう1つは、温度の上昇によって海水の体積が増えていることです。

南極の氷の10分の1が融けるだけで海面が7m上昇します。すでに南極の気温は2.5℃上昇し、房総半島くらいの大きさの巨大氷山がいくつも流出しはじめています。

海面が上昇すると、海抜の低い土地は海に沈んでしまう可能性があります。たとえば、イタリアのヴェネツィアなどの海抜の低い都市、南太平洋にうかぶツバルやインド洋のモルディブのような海抜が1 ~ 2mほどしかない島国は、海面上昇によって沈んでしまうと心配されています。

また、海面が上昇すると、海抜の低いところにある井戸に、海水が入ってしまいます。そうすると貴重な淡水が失われることになります。

気候変動は数多くの環境難民を生みます。南太平洋に浮かぶ群島国ツバルは、気候変動による海面上昇で、地球上からすがたを消す最初の島の1つです。ツバル共和国はやせ細り、首都のあるファンガファレ島は、すでに海上に線を描いたような島になっています。島の長さは約10㎞ほどですが、幅は広いところで700m弱、狭いところでは10mほどしかありません。今後、ツバルで暮らしていくことができなくなった場合、人びとはほかの国へ移住しなくてはならないでしょう。

2014年、NASAの研究者は「南極の氷が将来崩壊せずにすむ限界点を超えた」と警告しています。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2013年、世界の平均海面が今世紀末に最大82㎝上昇するとの報告書をまとめましたが「この見通しも上方修正が必要になる」と指摘しています。

日本でも水没する土地がある

環境省の研究班は、2014年、温暖化の予測を公表しました。このまま温室効果ガスが増えた場合、今世紀末の平均気温は20世紀に比べて3.5 ~6.4℃上昇、海面は60 ~ 63cm上昇、最悪の場合、砂浜は83 ~ 85%消失し、年間の洪水被害額は約3倍(最大約6800億円)になるとされています。また熱中症や高温で持病が悪化して死亡する人の数は2倍以上になると考えられます。

日本の沿岸部には、満潮時に海面より地面の標高が低くなる土地「0メートル地帯」があります。その面積は、8万6100ha。野球のグラウンド(両翼100m)、約8万6100個分です。こうしたところは海面上昇の影響を受け、大雨のときなどに大きな被害が出る可能性があります。「0メートル地帯」は東京、名古屋、大阪など大都市部にも広がっているので警戒が必要です。

海面が1m上昇すると、大阪では、北西部から堺市にかけて海岸線がほぼ水没します。東京でも、江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区のほぼ全域が影響を受けます。仮に堤防をつくったとしても水はわずかなヒビ割れなどから侵入するでしょう。40㎝の上昇で、沖に出ている120m分の干潟が消滅し、そこをすみかにしている生物の産卵や子育て、そこをえさ場にしている渡り鳥にも影響が出ます。

砂漠化によって住めなくなる土地

水が増えて困る土地がある一方で、水がなくなって困る土地もあります。砂漠化です。地球の表面積に占める陸地の割合は約29%で、その面積は1.49億㎢です。この陸地のうち砂漠の占める割合は、現在、約30%にあたります。

国連環境計画(UNEP)によると、世界の砂漠化は、現在刻々と進行中で、そのスピードは毎年6万㎢。これは九州と四国をあわせた面積に匹敵するといわれています。

とくに深刻なのは中国北部、中央アジア、インド、中近東、アフリカの
サヘル地帯、北アメリカ中西部などです。

 

参考資料:「いちばんわかる企業の水リスク」(橋本淳司/誠文堂新光社)
アクアスフィア・水教育研究所