動画《膨大》Tシャツの一生に必要な水

普段何気なく着ている衣服も食べものと同様水の産物です。Tシャツ1枚にはどれだけの水が必要だろう。もし綿でできていれば250グラムの綿花を使い、その生産に2900リットルの水が必要です。綿花の多くは、中国、インド、パキスタン、アラル海周辺でつくられます。アラル海は大量の水が使われたために、北海道と同じくらいの面積があった湖が消えてしまいました。もしかしたらあなたの衣服が、このことに関係していたかもしれません。

さらに染色の工程でも大量の水を使い、排水には環境に負荷を与える物質を含んでいることがあります。インド南部にあるティルプールという町は、繊維工業が盛んで「インドのマンチェスター」と言われます。旧式の染色機械が使われることも多く、排水にクロム、鉛、カドミウムなどの重金属類が含まれることがあります。クロムは発癌物質であり、鉛は子どもの発達障害を引き起こすことがありました。また、排水が流れ込んだために作物がとれなくなってしまった死んだ農地、汚染されて病気を引き起こした井戸もあります。

繊維工業の環境負荷は大きいのです。年間に世界各地で数兆リットルの水が消費され、その水が化学物質とともに処理されることなく、川や海に捨てられています。

このままでいいわけはない。何かできないだろうか。

たとえば、新しい技術に無水染色というものがあります。水の使用量はほぼゼロで、汚染水の廃棄もなく、染料となる化学物質の使用量も格段に少ない。そのうえエネルギー消費も大幅に削減されます。ただ、こうした新しい技術の導入に関心のない工場主も多い。現存は安定的に水を確保できているし、数十年前の設備で減価償却が終わっているので大きな収益を上げられます。まして新技術は高額だし、いまのところ、ポリエステルなど一部の素材にしか使えない。

でも、これからはみんなが環境に負担のかからない衣服を積極的に選ぶ時代になるはず。僕たちにはつくる責任と使う責任があります。

アクアスフィア・水教育研究所