企業の水リスク(27)サプライヤーの意識を変えて 水リスクを減らす

節水意識の高いサプライヤーに変える

同じ原材料をつかっていても、サプライヤーを変えるという方法があります。

同じ地域にあっても、節水意識が低く水を大量につかっているサプライヤーから、節水意識の高いサプライヤーに変えることで、水の使用量をおさえることができます。

別の見方をすれば、水の少ない地域で操業しているサプライヤーから、水の多い地域で操業しているサプライヤーに変えることで、環境負荷を減らすことができます。

製造工程での水使用量を少なく

リーバイ・ストラウス社は1992年に「水ガイドライン」をつくり、水資源効率、再利用など、水マネジメントについての具体的な方法をまとめています。これは業界初の試みでした。

水ガイドラインは、2007年度に改訂されてすべての工場に適用されました。2009年には、適用範囲が2次サプライヤーまで拡大され、2011年には63社の主要なサプライヤーのエネルギーと水使用量に関するデータ収集を実施しています。

サプライヤーは自社の水使用量のランキングについてフィードバックを受け、削減に取り組んでいます。水をつかいすぎているサプライヤーは取引してもらえなくなる可能性もあるので必死です。

これはサプライヤーの水を大切にしようという意識を高め、サプライチェーン全体での水リスク低減に結びついています。

ウォルマートのリスク測定方法

世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートでは、サステナビリティ分野でのテーマ設定、目標設定、効果測定(モニタリング)を効果的に行うため、さまざまな指標の効果測定を行っています。

とりわけ強化しているのが、「食料」「農作物」分野の測定です。

ウォルマートが提供する食料品を作るのに、どれだけの環境、社会的な負荷をかけているのか、どれだけ効率的(経済的な効率性だけではない)に食料品を生産できているのかを測定しています。

ウォルマートは、Stewardship Index for Specialty Crops(社会や環境の持続可能性強化を目指すNPOや企業の集合プロジェクト)のつくった食料品に特化した持続可能性測定モデルです。

この測定モデルでは以下のことがわかります。

 

ウォルマートの持続可能性測定モデルでわかること

1.人的要素
・人的資源(労働者の健康・安全、労働条件など)
・コミュニティ(地域雇用の実施など)

 

2.環境要素
・大気の質
・生物多様性、生態系
・エネルギー消費
・温室効果ガス排出量
・栄養素
・パッケージング
・殺虫剤使用
・土壌
・廃棄物
・水質
・水消費量

3.経済要素
・環境に配慮した生産、流通された製品の購買
・公平な価格設定

ウォルマートでは自社だけでなく、生産者・加工者・流通者などサプライチェーン全体での測定を行っています。こうすることでサプライヤーの意識を高めています。反対に、意識の低いサプライヤーはウォルマート取引できないことになります。

 

参考資料:「いちばんわかる企業の水リスク」(橋本淳司/誠文堂新光社)
アクアスフィア・水教育研究所