【報告】10/3、10/17「高村薫著『我らが少女A』の舞台・武蔵野の水辺」(主催」小金井市公民館東分館様)

2019年10月3日、10月17日の2回、小金井市公民館東分館様主催の講座にて、橋本淳司が「高村薫著『我らが少女A』」をテーマに水の話をいたします。

1回目の10月3日は、『我らが少女A』のなかから「水に関する記述」をピックアップしつつ、武蔵野の水辺の特徴を楽しみながら考えていきます。

・・・橋本淳司より・・・

「青みのない冬草の土堤を、四両編成の電車が走る。早朝と深夜を除き、平日も休日も、上り下りともに十二分感覚で行き来し、途中、いくつかのハケ(河岸段丘の崖)を横切っている小さな鉄橋では、風切り音を廟廟ち野っ原へ響かせる」

『少女A』には水は出てこないのでは、と思う方も多いと思いますが、ハケ、ハケと鉄道、ハケと道路、水彩画、ターナー、野川公園に立ち込める霧(「野川から湧き出す一面の霧」)などさまざまなキーワードがあります。

そして何よりなぜ野川公園で殺人が起こり、なぜ、この地が舞台になったのかと考えてしまいます。

高村さんが国際基督教大学の卒業生で、この地を知り尽くしているということは、もちろんあるでしょうが、僕はおかしな妄想にとりつかれています。「人びとの記憶の片々が織りなす物語の結晶」を読み、個人の人生は伏流水のようであり、他者との邂逅は湧水のようではないか、だからこの作品の舞台に野川が選ばれたのではないか、と本日歩いて思ったのです。まったくの私見ですが。

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2回目の10月17日は、小金井市公民館東分館から武蔵野のはけを下り、野川公園までのミニ散歩をいたしました。

高村薫さんの描写力、視覚、聴覚、肌感覚を感じながら、ハケと湧水と野川を感じ、考える2時間。
 参加者の方々から、「普段何気なく歩いている野川周辺を今回はゆっくりと散策し、今まで気づかなかった草花や生き物などを改めて知ることができて良かったです。また、水の成分調査等を体験できて非常に勉強になりました。」というご感想をいただきました。

 そして、事件が起こった場所は多分この辺り。12月25日の早朝、ここに朝霧がたちこめるなか、美術教師はどんな気持ちだったのだろうか。ターナーの絵のような風景のなかで湧水の音を聞き、冬の朝のひりひりとした空気を感じていたのでしょうか。

詳細は、小金井市公民館東分館様のWEBサイトをご覧ください。

アクアスフィア・水教育研究所