【報告】2019年4月22日 さいたま市「今こそ、私たちの水道について考えよう! 『最後の一滴まで』上映&水ジャーナリスト橋本淳司トーク」(主催:パルシステム埼玉様)

2019年4月22日、さいたま市の「ぱる☆てらす」において、

「私たちの水道について考えよう! 『最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争』上映 & 水ジャーナリスト・橋本淳司トーク」(主催:パルシステム埼玉様)

が開催されました。約50人の方が参加されました。

ドキュメンタリー映画『最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争』(ヨルゴス・アブゲロプロス監督、ギリシャ)は、水道の民営化をめぐる企業と住民との攻防を描き、水道の管理運営を企業に委ねることの危険性を訴えています。

上映後、橋本淳司が参加者のみなさまから質問をいただきながらトークを行いました。

「そもそも水道民営化はいつはじまったのですか?」

「1980年代、サッチャー首相は、新自由主義政策の元、電話、ガス、空港、航空会社、水道を民営化しました。」

「では、PFIはどうでしょうか?」

「サッチャー改革の後、PFIは「完全民営化に準ずる施作」としてジョン・メジャーの保守党政権によって開発され、世界各地で採用されました。そして、労働党政権(ブレア、ブラウン政権)がPFIを推進しました。EUの財政規律による制約下で短期間に多くのインフラ整備を行おうとしました」

「イギリスがPFIを終了すると聞きましたが本当ですか?」

「PFIは必ずしもうまくいったとは言えません。株主配当と高い資金調達コストが、利用料金や委託料を押し上げ、事業リスクの移転、事業効率の向上など想定されたメリットは十分に実現しませんでした。PFIを導入していたロンドンの鉄道事業、マンチェスター市のごみ処理事業は失敗し、自治体の業務を請け負っていたカリリオン社は経営破綻しています」

「日本では水道に関する報道はほとんどが改正水道法の民営化(コンセッション)に関するもので、もともとある水道の問題は取り上げられていないと感じていましたが、どうでしょうか?」

「水道法改正の理由は、経営の厳しくなった水道事業を維持していくためとされています。では、なぜ水道事業の経営はむずかしくなったのでしょうか。1つ目は水道事業者の料金収入が減っていることです。節水型の機器が普及して社会全体での水使用量が減ったこと、人口が減ったこと、2つ目は、水道管や浄水場などの施設が古くなり、更新に費用がかかること、そして3つ目は、水道事業に携わる職員数が減っていることです」

「改正水道法とはどういう法律ですか?」

「改正水道法では、水道事業を隣接するいくつかの自治体と共同して行う広域化、人口が減少していく社会に合わせて水道施設を減らしていく適正規模化を推進しています。同時に、水道事業の運営権を、民間企業に一定期間売却するコンセッション方式を選択することが可能になりました」

「厳しい水道の状況を改善するにはどうしたらよいですか?」

「厳しいのは小さな自治体です。現状を知り、将来の人口減少と向き合い、広域化やダウンサイジングを行っていくべきでしょう。人口の集中している場所には大規模な施設で対応する、まばらな地域には小規模な施設で対応するなど、すみわけも必要になります。そのためにも市民が水道の持続に関心をもって、公共政策に参画しましょう」

などとお話いたしました。

主催者の方も報告記事をWEBサイトにまとめてくれています。

主催者のみなさま、参加者のみなさま、ありがとうございました。

アクアスフィア・水教育研究所