企業の水リスク(39)間伐材の活用を考えよう

国内と海外の森が窮地に

現在、日本人が1年間につかう木材の容積は、約1億㎥ですが、そのうちの8割を外国産に頼っています。自給率は食料よりも低いのです。

1964年の木材輸入自由化以降、価格の安い外国産材が市場にあふれ、生産コストや人件費がかかる国産材の需要は急速に減少しました。需要と供給のバランスが崩れたために、国産のスギ、ヒノキ、マツなどの価格は、50年前の半分程度に落ち込み、間伐など森林管理を行うと経営が成り立たなくなりました。そのため間伐されるのは補助金分だけで、放置され、荒廃する森が増えています。

そして荒廃した森の土壌からは、保水力が失われます。日本の森と水源は、いつのまにかピンチに陥っていたのです。

ですが私たちのまわりには木がたくさんあります。木の家に住み、木の家具をつかいます。日本の木材自給率は2割程度しかないということは、机、テーブル、本棚などは、ほとんどが輸入された木材でつくられたものです。

前にもお話しした通り、(トル?)日本は世界各国が輸出する丸太の半分近くを買い、海外では日本向けに森が乱伐されるケースもあります。私たちが海外での森林破壊に関与してしまった可能性が高いのです。

国内の森林は荒れ、水源がピンチになりました。海外の森林は破壊され、保水機能は失われました。こうしてみると、「安い木をつかう」ことで2つの森と2つの水源を壊してしまったことになります。

身近な木材をつかうことの大切さ

ですが意識がちょっと変われば、2つの森と自らの水源を守ることができそうです。

これも流域で考えるのが基本です。たとえば東京西部にある企業が多摩産材をつかうとします。その収益が森で仕事をしている人に還り、間伐などの手入れをしたり、間伐した木材を加工することができます。

すると結果的に荒廃した森が蘇っていきます。健全に管理された森は水を育みますから、東京の水源である奥多摩が守られることになります。

切り出した間伐材はつかってこそ活きます。工夫次第でさまざまな活用法のある間伐材。それを流域に住む人で支えていくしくみができれば、持続可能な流域ができます。木は、きちんと循環させることさえできれば、絶えることのない資源です。あらゆる資源が不足している日本ですが、木に関しては、世界に誇れるほどの備蓄量があります。この資源を守りながら活用することで、2つの森と自らの水源を守ることができます。

 

参考資料:「いちばんわかる企業の水リスク」(橋本淳司/誠文堂新光社)
アクアスフィア・水教育研究所