企業の水リスク(24)製品の原材料を変えて水リスクを減らす

サッカースパイクは大量の水をつかう

これまでサプライチェーン全体での水使用量を把握し、どこに水リスクがあるかを見極めるという話をしてきました。

ここからは、水リスクをどのように減らすかについて話していきたいと思います。

まず、原材料を変えて水リスクを減らしたケースです。

プーマ社では、自社製品が環境におよぼす影響を、サプライチェーン全体で調べました。その結果、水リスクがとても高いということがわかりました。とくにプーマ社の製品は、原材料をつくる過程で大量の水をつかいます。

たとえば、サッカースパイクには動物の革をつかいます。軽くてしなやかなカンガルー素材、柔軟性のあるカーフ(子牛)素材、耐久性に優れたステア(生後1年以上の牛)素材などがあります。前にもお話ししましたが、(トル?)牛を育てるにはとてもたくさんの水をつかいます。牛革1キロには1万5400ℓの水が必要です。

もし生産地で水不足が起きれば、サッカースパイクにつかう牛革が、今後は安定的に供給されなくなる可能性があります。

牛革を生分解性の素材に変更

そこで、プーマ社では、水リスクを低くするために、スポーツシューズの素材の変更を考えました。もともと人工皮革のスパイクはありましたが、伸びにくく縮みにくいので、天然皮革に比べて足に馴染みにくいといわれていました。

トップからプロジェクトチームに与えられた使命は、「天然皮革と同様の性能をもち、水リスクに強い素材を探す」ことでした。プロジェクトチームはその1年後、生分解性の新しい素材を見つけました。

これによってシューズの水の使用量、環境負荷を大きく減らすことができました。

さらにプーマ社は、そのことをお客様にも伝えました。牛革のシューズと性能は変わらないが、こちらのほうが環境負荷は小さいとアピールし、使用してもらうようにしました。原材料を変更することにより、水使用量を少なくし、水リスクを低くすることができたよい例です。

 

参考資料:「いちばんわかる企業の水リスク」(橋本淳司/誠文堂新光社)
アクアスフィア・水教育研究所