企業の水リスク(15)地球規模での気候変動は、 企業にどんな影響を与えるか

異常気象も10年続けば常態

「今年の夏は異常だね。前はこんなに暑くなかったのに…」

「最近、雨の降り方が変わったよね。全然降らなかったと思ったら、急に激しく降って洪水になったり…」

こんな会話をしたことはありませんか。

暑くなったのはけっして気のせいではありません。地球は過去100年でじわじわと暑くなってきました。1906 ~ 2005年の100年のあいだに、世界の平均気温は0.74℃上昇したとされています。このうち1976 ~ 2005年の30年のあいだに0.6℃上がりました。

企業活動では、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料をつかいます。化石燃料は、燃えると温室効果ガスを出します。温室効果ガスは、太陽からの熱を地表にとどめるはたらきがあり、地球を適温に保って生物を守っています。

ところが、私たちがたくさんの化石燃料をつかってきたために、必要以上にたくさんの温室効果ガスが出るようになっています。この結果、地球の表面の温度が少しずつ上がっています。

今後も気温が上昇する

国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」 の第5次評価報告書(2013)は、今後についていくつかのシナリオを描いています。温室効果ガスの排出量が最も多かった場合、2100年の平均気温は、最大4.8℃上昇すると発表しました。

気温が上昇すると、さまざまな影響が出ます。近年発生した出来事をまとめたのが下のマップです。

雨の降り方も変わっている

 

この10年で雨の降り方は明らかに変わりました。広島県・嚴島神社には回廊の浸水回数が記録として残っています。

嚴島神社は平清盛によって建造され、西暦1555年に毛利元就によって大改修され、それ以降、同じ場所で同じ標高に建っています。神社の神官が記録する日誌には、高潮によって神社の回廊が浸水したことが記されています。

2000年以前は浸水回数は年間1、2回、多くても4、5回でした。それが21世紀に入ると浸水回数は毎年2桁に増加しています。

この現象について最初のうちは「異常気象」といわれていましたが、10年以上も同じことが続くのですから、「常態が変わった」と考えるべきです。大河川が洪水になるような、1日単位の豪雨が増えているかどうかははっきりしませんが、短時間の激しい雨が増えているのは確かです。

それは気温の上昇によって大気中の水蒸気量が増えていることが原因です。長期的には気候変動や都市部のヒートアイランド現象の影響が考えられますが、日本近海の海面水温が平年より高く、台風が発達しやすく、また気温の高い日が多いことも影響しています。

参考資料:「いちばんわかる企業の水リスク」(橋本淳司/誠文堂新光社)
アクアスフィア・水教育研究所