企業の水リスク(13)評判が悪くなって企業・商品ブランドが 低下する、裁判になるというリスク

 

社会的な責任意識のない企業と見なされる

もし、企業が周辺の水環境のことを考えずに、大量の水をつかったとしましょう。周辺では、地下水が涸れてしまったり、川の水量が少なくなったりします。湿原が消え、そこに棲んでいた生きもののすみかが奪われることもあるでしょう。

あるいは工場排水をきちんと処理しないまま流していたらどうでしょう。うっかりしていたではすまされない問題です。

このように、企業の水利用が適切でないために、周辺の住民の水利用に悪影響を与えたり、水環境を悪化させることがあります。こうなると周囲に悪評が流れ、メディアでも繰り返し報道されることになります。「不適切な水利用をする会社」「社会的な責任意識のない企業」というイメージが浸透し、それが企業ブランドの低下、株式の下落、商品の不買運動などに結びつく可能性もあります。

これが「評判リスク」というものです。

たとえば大手飲料メーカーが、2000年代の初めのころ、インドでペットボトル工場を稼働させました。その取水量は1日当たり100万~ 150万ℓと大規模でした。その直後、近隣の住民は、日常的に水不足に苦しむようになりました。工場近隣の住民は反対運動を起こしました。同社工場の地下水くみ上げにより、近隣の井戸が干上がったのではないか、住民の不信に端を発したものです。

工場前にはヤシの葉で覆われた小屋が建ち、住民は「きれいな水を。私たちが生まれながらにもっている権利だ」という横断幕を掲げて陣取りました。企業側は「工場でつかう地下水は、村の井戸とは水脈が違う。訴えは事実無根」と主張しましたが、インドでの信頼を失い、不買運動が起こりました。

訴訟になり撤退というケースも

ボトルウォーターの水源地では、住民による訴訟が起きることもあります。米国テキサスでは、1996年、大手ボトル水メーカーが地下水をくみ上げました(34万ℓ/日)。すると近隣住民のつかっていた井戸が干上がってしまいました。近隣住民は、操業停止と法改正を求めて訴えを起こしました。

同州では、私有地内での地下水くみ上げは規制できないとされていました。

しかしこの訴訟を経て、同州では、「地下水保全地区」の設立を通じた規制を可能とする新法が成立しました。米国ウィスコンシンのケースでは、企業が大量に水をくみ上げ、住民は訴訟を起こしました。一審では企業が負けましたが、地元での評判が悪くなったことと、これ以上の係争に発展するのを嫌った企業が撤退を決めています。

こうしたケースでは、ペットボトル水メーカーが注目される傾向にありますが、実際にはすべての企業が水をつかっています。

日本のエビの養殖業者が、エビを育てる環境をつくるために内陸部の湖沼に塩を入れ、その後、水が汚れたために他の場所に移りました。エビ養殖業者の撤退後、地域住民はその土地を農業用につかおうとしましたが、塩を一度入れてしまったために復元ができなくなってしまいました。こうしたことが国際的に信頼を失うきっかけになります。

操業による水の使用が地域社会に与える影響が大きい企業は、常に注意が必要でしょう。

 

参考資料:「いちばんわかる企業の水リスク」(橋本淳司/誠文堂新光社)
アクアスフィア・水教育研究所