企業の水リスク(12)投資が受けられなくなるというリスク

投資家が水に関する情報の開示を迫る

企業は株式市場からお金を調達しながら事業を営んでいます。投資家は、危ない会社には投資したくありません。そこで企業の成長や持続可能性を見極めます。

水がなくなると企業活動に大きな影響を与えます。それは、これまで見てきたとおりです。そこで最近投資家は、「この会社は水リスクをかかえていないだろうか」という目で企業を見るようになりました。

水に関する情報をもっと開示するよう求め、その企業のビジネスにどのくらい影響があるのかを見極めるために情報開示を求めています。あるいはCEOがリーダーシップをとってこの問題を解決するようにうながしています。

今後、水リスクをかかえる企業は、投資を受けにくくなるでしょう。

投資家の判断をサポートする動きもあります。機関投資家から依託を受け、企業の水情報を調査するのです。

カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトの動向

たとえば英国には、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)があります。CDPはもともと、気候変動に関する情報開示を推進してきました。2000年の発足以降、毎年、大企業に対してアンケートによる情報開示を求め、CO2の排出データなどを収集してきました。

このCDPが2010年、水に関する情報開示を求めるようになりました。それがCDP ウォーターディスクロージャーです。気候変動のときと同様、CDPは機関投資家に代わって、企業にアンケートを送付し、その回答結果を開示します。

企業も水情報の開示を積極的に行うようになっています。たとえばコカ・コーラ・エンタープライズ(本社・米アトランタ)は、製品1ℓをつくる際の水使用量が次第に減っていることをアピールしています。

2007年には1.67ℓでしたが、2011年には1.43ℓになり、2020年に1.2ℓにしようとしています。

なぜ水使用量の節減と情報開示を行うのかといえば、世界的な水不足から、水を効率的に使用しないと持続可能な操業ができなくなると考えているからです。同時に、企業努力を開示することで、投資家の懸念を払拭し、投資を得やすくするねらいもあります。

反対にさまざまな水リスクを放置すると、投資家から資金を得にくくなるといえます。

 

参考資料:「いちばんわかる企業の水リスク」(橋本淳司/誠文堂新光社)
アクアスフィア・水教育研究所