プロジェクトWET「重大な過ち」を活用する

教育現場でアクティブ・ラーニングが行われることが増えました(※文部科学省の学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」という言葉が使われていますが、ほぼ同義ととらえ、ここでは「アクティブ・ラーニング」という言葉を使っていきます)。

水をテーマにアクティブ・ラーニングを行う場合、「プロジェクトWET」のアクティビティは有効です。これは米国で開発された教育プログラムで、WETはWater Education for Teachersの頭文字をとったものです。

今日は「重大な過ち」というアクティビティを紹介します。

このアクティビティでは参加者は「アメリカの小さな町の医師チーム」となって、「町で起きた水問題の原因と課題、解決方法」を考えます。

地下水の汚染について学べるアクティビティですが、それだけに止まりません。

静岡県立三島北高校では、「チームで社会課題を解決する」活動を行っていましたが、生徒は最初、何をどう考え、どうアクションを起こしていけばいいのかわかりませんでした。ですが、このアクティビティを行うことで、おおまかに全容を感じる(理解まではいきませんが)ことができます。

舞台となる町では、数年前から町で不可解な症状を訴える人が増えてきました。手足に黒いイボのようなものができ、だるさ、しびれに悩んでいます。そうした患者に対し、医師のチームは、何が原因で、それをどのように解決していくかなど、対話し考えていきます。

 

立てた仮説を検証していくプロセスもあり、そういうときにどうするかも問われます。そして、最後に「重大な過ち」とは何かを考えます。これを考えるとき、個人的には、研究や仕事をしていくときの姿勢を正されます。

当WEBサイト編集長である橋本淳司が武蔵野大学工学部環境システム学科の「環境特殊講義3」で「地下水マネジメントの必要性」について考える時も、このアクティビティを活用しました。

 このときは「地下水を知ろう」というアクティビティの後に行い、その後、学生さんに地下水に対する課題と、解決方法のおおまかな方針を話し合ってもらいました。主な意見には以下のようなものがありました。

<地下水に関するルールが必要ではないか>
・利用者間の争いが頻発する前に一定のルールが必要
・誰もが平等に水を利用できるような決まりをつくる
・地下水法は必要だと思うが企業などの反対も多いだろう
・地下水への関心の薄い現状では地下水法の議論は深回らない
→どのようなルールであればみんなが納得するのか?

<地下水に関する教育活動が必要ではないか>
・地下水に関しての議論が深まらないのは多くの人が地下水のことを知らないからだ
・地域の地下水について住民で議論し、意見を首長や行政に提出する
・子供たちへの教育活動(小学校から高校)を行う。地下水に関する体験型教材をつくる
・企業が自社が使用する水についてきちんと理解したうえで宣伝することで自然と意識が高まるのではないか

<地下水保全に向けてどんなアクションが考えられるか>
・まずはしっかりした調査(地下水量、誰がどれだけの水をつかっているか、汚染度はどのくらいか)を行うべき。数値データのない議論は不毛
・同じ地下水脈の水を活用する自治体が協働するには地域の地下水について把握する必要がある
・林業分野、農業分野、企業活動が協働して水保全を行うことの合理性を説く
・保全活動の成果を数値によって見える化すべき

<地下水汚染>
・福島第一原発の汚染水問題は拡大を続けている。そのことをきちんと認識し、解決に向けて真摯にとりくむべき
・地下水質を保全する意識が農業者に必要。施肥や家畜のし尿が地下水汚染につながることを認識し、農業主体で地下水を保全する方法を自治体で行う

小学校高学年から大人まで楽しめるアクティビティです。

アクアスフィア・水教育研究所