企業の水リスク(3)地球は水惑星。水豊富だから大切にする必要はないんじゃない?

地球のすがたを思い描いてみよう

 「ありがとう」の反対語って、何だか知っていますか。

「ありがとう」の反対語は「あたりまえ」。「ありがとう」を漢字にすると「有難う」。「有難し」とは「あることがむずかしい」とか、「めったにない」という意味です。

 だから「ありがとう」の反対は、「あたりまえ」です。日本では、水は「あたりまえ」にあるものと、思われているのかもしれません。だから、水を特別に意識することも、ましてや、水に感謝する気持ちもわきにくいですね。

 ですから、「そもそも」のところから話をはじめたいと思います。

まずは、「どうして地球に水があるのか」

 地球のことを「水の惑星」ということがあります。

 

あなたは宇宙から地球をうつした写真や映像を見たことがありますか。

青く宝石のように輝いているでしょう。この青は水です。地球には、たくさんの水があることがわかります。

 それだけではありません。

水はさまざまなかたちで存在しています。

地球の水は、3つのかたちにすがたを変えます。

1つ目は、水道の蛇口から出るような「液体の水」です。

2つ目は、冷凍庫の氷のような「固体の水」です。

3つ目は、空気中にただよう水蒸気のような「気体の水」です。

 地球には、液体の水だけではなく、気体の水も固体の水もあるのです。

 宇宙には、水をかたちづくっている酸素と水素がたくさんあるので、太陽系のほかの惑星に、水があっても不思議ではありません。

 しかし、地球のようにたくさんの水があり、しかも気体、液体、固体の3つの状態で存在している惑星はありません。いったいどうしてなんでしょうか。

太陽との距離がちょうどいい

 地球に水がある理由は、2つあります。

 1つ目は、太陽と地球の距離がちょうどいいことです。

太陽系惑星は、水星、金星、地球、火星、木星…と並んでいます。

地球より太陽に近い金星では、太陽から受ける熱が大きいので、水は蒸発してしまいました。

地球より太陽から遠い火星では、太陽から受ける熱が小さくて、水は凍ってしまいました。

 水が液体でいられる温度は0 ~ 100℃(1気圧として)です。

水星の平均温度は300℃、金星は200℃とかなり高いのです。

地球の平均温度は15℃ですが、火星になると-50℃とかなり低くなります。

火星よりも外側の惑星はもっと低くなります。水が液体でいられるのは地球だけ。つまり、地球と太陽との距離がちょうどいい。太陽から受ける熱の量がちょうどいいのです。

 太陽との距離がもう少し近かったり遠かったりしたら、地球に気体、液体、固体の水がそろうことはなかったでしょう。

地球が水を逃がさない理由

 もう1つの理由は、大気を宇宙空間に逃がさないだけの、十分な質量と重力を、地球がもっていることです。

 月と地球は、太陽からの距離がほぼ同じです。ですが、月には海がありません。これは月の質量が地球の100分の1、重力が6分の1だからです。地球と月は同じ頃にできたのですが、月の水は宇宙空間に飛び散り、水のない衛星になったと考えられています。

 火星の場合は、質量は地球の9分の1、重力は2.26分の1なので、大気を惑星の表面に引き止めておくことができません。

 地球の重力から計算すると、地球が保持できる水の量は、13億5000万㎦とされています。海の深さが平均4000mとすると、地球の表面積の約70%が水ということになります。

 こんな話を聞くと、「やっぱり水はあたりまえのようにあるものだ」と思うかもしれません。「水不足なんて起こるはずがない」、「何の心配もなく、どんどん水をつかっていいんじゃないの」と思うかもしれません。それでも水は「ありがたい」のです。

 いったいどういうわけでしょう? 少しずつ水への関心が高まってきましたか? 「愛の反対は憎しみではない無関心だ」というマザー・テレサの言葉がありますが、水を大切にするにも、まずは関心をもってもらえるとうれしいです。

参考資料:「いちばんわかる企業の水リスク」(橋本淳司/誠文堂新光社)