動画コラム「コロナ禍での豪雨災害 あなたが取るべき行動は?」

コロナ禍で豪雨災害にどう対応するかを考えるポイントを3分でお話しします。

以下は詳細です。(長いです)

コロナと豪雨という複合災害への対応を考えなくてはならない。

内閣府は5月18日、「新型コロナが収束しない中でも危険な場所にいる人は、避難が原則」と呼びかけるポスターを公開した。以下に自治体が行うこと、私たち一人ひとりが行うことをまとめてみる。

自治体は避難場所、避難所の準備が急務

まず自治体は、これまでの避難所をコロナ禍用にバージョンアップする必要がある。

指定緊急避難場所は災害対策基本法で以下のように定められている。「市町村長は、防災施設の整備の状況、地形、地質その他の状況を総合的に勘案し、必要があると認めるときは、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における円滑かつ迅速な避難のための立退きの確保を図るため、政令で定める基準に適合する施設又は場所を、洪水、津波その他の政令で定める異常な現象の種類ごとに、指定緊急避難場所として指定しなければならない」(法第四九条の四)。法律では「指定緊急避難場所」と「指定避難所」は相互に兼ねて指定することが可能だが、以下のように区別されている。

  • 指定緊急避難場所 居住者等が災害から命を守るために緊急的に避難する施設又は場所
  • 指定避難所 避難した居住者等が災害の危険がなくなるまで一定期間滞在し、又は災害により自宅へ戻れなくなった居住者等が一時的に滞在する施設

一時的に避難するのが前者、被災後も一定期間滞在するが後者ということになる。

これまでの避難場所・避難所は、災害時に多くの人が密集しており、感染のリスクが高い。避難場所・避難所での感染を防ぐためには、狭い空間にぎゅうぎゅう詰めではいけない。日本の避難場所・避難所は一カ所当たりの収容人数が多すぎた。避難者同士が一メートルと離れずに過ごすケースもあり、これでは人との接触が増えて感染リスクが高まる一方だ。体育館や公民館の床に雑魚寝するのもよくない。ウイルスが集まる床に目、鼻、口を近づけるからだ。

どのように改良すればよいか

  • 避難場所・避難所を増やす

避難場所・避難所を増やす目的は、「コロナの感染者、感染が疑われる人、そうでない人を分けること」、「避難場所・避難所における一人当たりのスペースを広くすることの2点だ。後者について言えば、2メートルのソーシャルディスタンスを考えると一人当たり4平方メール必要になる。

そのために従来の学校体育館や公民館に加え、学校の教室、企業の研修施設、地元のホテルや旅館、福利厚生施設、お寺や神社なども避難場所・避難所として検討する必要がある。

  • 避難場所・避難所を区切る

感染は、人とウイルスが出会うことで起きる。感染経路を寸断するために、小規模分散型の避難場所・避難所にする。前述のように教室を活用して人を分散させるのが一つの方法だ。

体育館などの大きなスペースを使用する場合は、区切る工夫が必要になる。2019年の台風19号の際、長野県上田市は簡易テント「ファミリールーム」を設置した。ファミリールームの材質はナイロン。ポリエステルだと気温が低くなるとゴワゴワして展開しにくくなるが、ナイロンは低温でもなめらかで、取り扱いやすい。避難場所・避難所を管理・運営する自治体の担当者でも簡単に設営でき、ワンタッチテントの要領で畳めば小さくなる。避難が終わった後、清掃、消毒したのちに折り畳んでコンパクトに収納でき、何度でもリサイクルが可能だ。

実際には、段ボール性の簡易ベッドと間仕切りを組み合わせて活用する自治体が多いだろう。

段ボールベッドは東日本大震災時の避難場所・避難所で有用性が確認され、その後、災害時には必要不可欠な支援物資となった。段ボールベッドの魅力の一つは強度。段ボールは、波形に成型された中芯に、表ライナ、裏ライナと呼ばれるボール紙を貼り合わせて作られている。三重構造であるため、単純な厚紙の五倍の強度があり、断熱効果も高い。軽量であるため簡単に持ち運び、取り扱いが簡単で、災害時には大量に避難場所・避難所に送ることができる。

ベッドなので高さが30センチ程度あり、ウイルスが集まる床から体を離すことができるし、身体の負担も少なくて済む。空洞が多い構造のため、非常食や水などを保管することもできる。安価で大量に用意でき、また簡単に設置でき、リサイクルも可能だ。災害時、被災者が寝起きする段ボールベッドを避難場所・避難所に届けてもらうよう製造業者と協定を結ぶ自治体も増えている。

また、段ボール性の間仕切りの一人用のサイズは2メートル×2メートル、2人用のサイズは2メートル×4メートル程度。間仕切りの高さを工夫する製品もある。従来よりも高い1メートル50センチ程度にすることで、プライバシーを確保し、咳やくしゃみによる飛沫感染防止を図り、同時に医療従事者が巡回する際に、目隠しにならないよう工夫している。段ボールに付着したウイルスの残存期間は二四時間とされ、使用後の処分も比較的容易だ。

  • 通路を広くする

通路にも工夫が必要。2メートルの広さを確保するとともに、一方通行にするなどして人の滞留・対面を減らす。一般的な体育館(30メートル×24メートル)で1人当たり4平方メートル、2メートルの通路を確保すると、42〜56人が避難できる。

 

市民がまず行うのはハザードマップの確認

豪雨災害は事前に備えることができる。それによって被害を食い止めることができる。前述した内閣府のポスターには「避難行動判定フロー」が書かれている。

最初に行うのは、自治体のハザードマップで自分の家がどこにあるか確認し、印をつけること。

ハザードマップは随時更新されているので最新版を確認する必要がある。

ハザードマップで印をつけた場所に色が塗られていたら自宅外へ避難、色が塗られていなければ自宅でが基本だが、いくつかの例外がある。

まず、色が塗られていなくても周囲に比べて土地の低い場所、崖の側に住んでいる場合は、自宅外へ避難することを決める。

また、色が塗られていても、①洪水による家屋の倒壊や崩落の恐れがないこと、②浸水する深さよりも高い場所に住んでいること(高層階など)、③浸水しても水、食料などの備えができ(何日分が必要かは洪水浸水想定区域図(浸水継続時間)に記された浸水継続時間を参考に備蓄量を決める)、トイレや排水など衛生環境を確保することができる、という3つの条件が揃っていれば、自分の家に留まり、安全を確保する。

もし迷ったら「避難する」と決めておくべきだろう。雨の様子を見ながら避難するかどうかを決めるという態度は、逃げ遅れにつながりやすく危険だ。

避難先と避難経路、タイミングを確認

次に自分の避難先を決める。前述したように、コロナの感染拡大を防ぐために、自治体の指定する避難所の数は増えている。これまでの避難場所・避難所とは違った施設が、新たな避難所として指定されている可能性もある。これについては自治体のホームページで確認しておく。

また、避難所ではなく、安全な場所(ハザードマップで色が塗られていない、かつ、周囲に比べて土地の低い場所、崖の側などではない)に住んでいる親戚や知り合いの家に避難する方法もある。その場合、あらかじめ「災害時には避難させて欲しい」と相談し、水や食糧などの備蓄品の購入や保管について相談しておこう。

避難先が決まったら、家族で共有し、一緒にそこまで歩いてみる。歩くときにはハザードマップを持参し、自宅から避難先までの道中に色が塗られている場所、低い場所、崩れやすい場所がないかを確認する。そのような場所は、実際に避難するときに、水や土砂で経路が塞がれている可能性がある。その場合、別の避難先やルートを探しておかなければならない。

次に、どのタイミングで避難をはじめるか。それは避難先への距離、避難する人(あなたと同行者)が避難にどれくらい時間がかかるかどうかで決まる。内閣府・消防庁の「避難行動判定フロー」によると、避難に時間がかかる場合は「警戒レベル3」で、時間がかからない場合は「警戒レベル4」で避難することとしているが、想定浸水地域が広域に渡る場合にはより早めの避難が必要になる。そういう意味でも事前に自宅から避難先までの移動シミュレーションをしておくことが重要だ。

こうしたことは自治体と学校が連動して、学校教育、社会教育として根付かせる必要がある。小中学校の総合学習の時間や夏休みの自由研究などで、家族や地域で実施するとよいだろう。

何を持って避難するかについては以下にまとめた。

豪雨・台風接近状況別行動チェックリスト

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