企業の水リスク(2)あなたの製品・サービスにはどれくらいの水がつかわれているか

(イラスト:加藤マカロン)

ハンバーガー1個にペットボトル1200本の水

 私たちは毎日水を飲み、水をつかって生活しています。料理、洗濯、おふろ、そしてトイレを流すのにも水が必要です。

 そして、企業のあらゆる商品にも水が必要です。製品にもサービスにも水がかかっています。どういうことでしょうか。

 あなたが、ファーストフードチェーンで働いているとしましょう。お客様からコーヒー1杯、ハンバーガー1つを頼まれました。さて、コーヒー1杯、ハンバーガー1つには、どれくらいの水がつかわれているでしょう。

 コーヒー1杯は125㎖です。

「だったら、それと同じくらいの水ではないか」

 と思うかもしれませんね。何しろコーヒーをいれるときにつかう水はそれくらいですから。

 でも、そうじゃないんです。

 じつは132の水がつかわれています。わずか1杯のコーヒーにペットボトル(2ℓ)で66本分の水がつかわれているなんで驚きです。

 どうして、これだけの量になるかというと、原料であるコーヒー豆を栽培するのに水が必要だからです。

 では、ハンバーガーはどうでしょう。

 あなたがハンバーガーを調理するときには、手を洗う以外に水はつかわないでしょう。バンズに、ハンバーグ、レタス、トマト、タマネギ、ピクルスなどをはさめばできあがりです。

 でも、バンズをつくるには小麦を育てなくてなりません。レタス、トマト、タマネギを育てるにも水は必要です。

 とくにハンバーグの原料である牛を育てるにはたくさんの水をつかいます。牛が水を飲む以外に、飼料(トウモロコシ、麦類、雑穀など)を育てるときに水をつかうからです。

 このように考えると、ハンバーガー1個をつくるのに2400の水が必要になります。これは2ℓのペットボトルで1200本分です。

 あなたはこう思うかもしれません。

「原材料をつくるときにつかう水は、うちの会社に関係するの?」

 と。

 ですが、もしあなたの会社の製品原材料をつくっている農場で水不足が起きたらどうなるでしょう。

 日照りが続いて、牛のえさが育てられなくなった。

 トマトやレタスをつくるためにつかっていた井戸水が涸れてしまった。

 こうなると、あなたの会社は、いくらお金を払っても、牛肉や野菜やコーヒー豆が買えなくなります。お客様にコーヒーやハンバーガーを提供できなくなります。あなたの会社は提供できる商品を失い、倒産してしまうでしょう。

Tシャツ1枚に給水車1台分の水

 ほかの商品も見てみましょう。アパレル産業は、ショップだけに注目すると、あまり水と関係なさそうに思えます。

 でも、そんなことはないのです。アパレル産業では、さまざまな衣料品を扱います。たとえば、Tシャツはどこからやってきたのでしょう。中国の工場? その工場では染色のときにたくさんの水をつかいます。さらに、その前の綿花はどこでできているのでしょうか?

 綿花の多くは、中国、インド、パキスタンやアラル海周辺でつくられています。

 綿花の栽培には、大量の水が必要です。

 あなたもTシャツを着るでしょう。Tシャツ1枚をつくるには、250gの綿花をつかいます。それをつくるのに、2900ℓの水が必要です。これは災害時などに活躍する給水車1台分の水とほぼ同じです。

 アパレル産業では、財布、ベルト、カバンなどの革製品も扱っているでしょう。牛革1キロに17000の水が必要です。

 あなたの会社の製品やサービスには、どれくらいの水が必要なのか、調べてみてください。

 製品をつくるためにつかっている原材料や部品がどこからきているか、そこではどれだけの水をつかっているかということです。

 自社のなかのことであれば見えやすいのですが、サプライチェーンでつかわれる水は見逃しやすいのです。

 原料として生物由来のものはつかっていない。

 コンピュータや車などの工業製品をつくっているので関係ないという会社もあるでしょう。

 しかしながら、鉄、アルミニウム、銅などの鉱物資源を掘り起こすときには、大量の水をつかいますし、製造過程でも水をつかいます。

 

参考資料:「いちばんわかる企業の水リスク」(橋本淳司/誠文堂新光社)