<水の科学17>海はなぜ青く見えるのか?

 海の色はなぜ青いのか。

 それは可視光線に関係しています。

 太陽の光のうち、人間の肉眼で見えるのは波長がおよそ380 〜780nm(1nm は1mm の100 万分の1)の範囲です。

 そのなかで波長が短いのが紫、青で、長いのが赤です。

 空が青いのは、太陽の光がごくわずかですが大気中の分子や微粒子で散乱させられるからです。

 19 世紀末までは、光は大気中のチリや水滴にあたって散乱していると考えられていました。

 ところが、チリや水滴は光の波長より大きい。光の散乱は、光の波長より小さい物体に光があたると発生します。

 そこで、空気中の窒素や酸素の分子にあたって散乱していると結論づけたのがレイリー卿ジョン・ウィリアム・ストラット(イギリスの物理学者・1842 年‒1919 年)です。

 散乱にもいろいろ種類がありますが、この空気中の分子による散乱などを特に「レイリー散乱」というのはそのためです。

 レイリー散乱では、散乱光の強度は波長の4 乗に反比例します。

 したがって、波長の短い青色の光ほど四方八方に散乱されやすいことになります。赤い光の波長は、青い光の波長の約2 倍ですから、散乱は約16 倍も弱い(16 分の1) ことになります。

 空を見上げると、その散乱光が目に入るので、青色に見えるのです(もっと波長の短い紫が見えないのは人間の目が紫を感じにくいためです)

 日の出、日の入のとき、太陽は私たちから見て地面すれすれに位置していて空がオレンジ色に見えます。

 これは通過する大気層の距離が長くなるので青い光は散乱されきってしまい、逆に散乱されにくい赤やオレンジの色が強調されて人間の目に届きます。

 海が青いのは、海の表面による空の光の反射ですが、それだけではありません。

 水分子が赤色付近の光を吸収するからです。赤色が吸収されると残りの光は青色になります。それが水の中の物質(ゴミやプランクトン)に散乱されて、私たちの目に飛び込んできます。

 水が赤色付近を吸収する度合いは非常に弱いので、手ですくいあげた水、コップにくんだ水は、無色透明に見えます。

 

「通読できてよくわかる水の科学」(橋本淳司/ベレ出版)より