<水の科学27>水没する土地、住めなくなる土地

日本でも水没する土地がある

 今世紀末の日本では平均気温が20 世紀末に比べ5 度以上上昇し、年間の洪水被害額は20 世紀末の約3 倍(最大 約6800 億円)と予測されています。

 また熱中症や高温で持病が悪化して死亡する人の数は2 倍以上になると考えられます。

 海面上昇は日本にも関係しています。

 日本の沿岸部には、満潮時に海面より地面の標高が低くなる土地「0 m地帯」があります。高度経済成長期以降、3 大湾(東京湾、伊勢湾、大阪湾)を中心に干拓や埋め立てによって低地に拡大しました。現在では0 m地帯の面積は約580km2 におよび、約400 万人が居住しています。こうしたところは海面上昇の影響を受け、大雨のときなどに大きな被害が出る可能性があります。

 日本では、1 m海面が上昇すると、全国の砂浜の9 割以上が失われると予測されています。大阪では、北西部から堺市にかけて、海岸線はほぼ水没します。東京でも対策をとらなければ、江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区のほぼ全域が影響を受けます。

 40cm の上昇でも、波打ち際から120cm ほどの干潟が消滅し、そこをすみかにしている生物の産卵や子育て、またそこを餌場にしている渡り鳥にも影響がでます。

 

 砂漠化によってすめなくなる土地

 水が増えて困る土地がある一方で、水がなくなって困る土地もあります。典型は砂漠化です。地球の表面積に占める陸地の割合は約29%で、その面積は1.49 億km2 です。この陸地のうち砂漠の占める割合は、現在、約30%にあたります。

 UNEP(国連環境計画)によると、世界の砂漠化は、現在刻々と進行中で、そのスピードは毎年6 万km 2。これは九州と四国をあわせた面積に匹敵するといわれています。

 とくに深刻なのは中国北部、中央アジア、インド、中近東、アフリカのサヘル地帯、北アメリカ中西部などです。

 

 

「通読できてよくわかる水の科学」(橋本淳司/ベレ出版)より