【動画】「本当は怖い水の漢字 第2回」
水を制するものは天下を制するという言葉がありますが、歴史を振り返ってみると、為政者にとって治水、洪水からまちをいかに守るかというのはとても重要な課題でした。
それは洪水によってとてもたくさんの犠牲が出ていたことを意味しています。さんずいの漢字のなかには、水の事故の犠牲を表しているものがいくつかあります。
まずは浮くという漢字です。この文字は水の上に漂う死体を表しています。つくりの部分は、子どもを手で抱き上げることも表現しています。
水の上を流れてくる水死体を表す漢字に、はん(うかぶ、くつがえる)という漢字と、はん(ひろがる)という漢字があります。うかぶ、くつがえるは、頭を上に向けた水死体、ひろがるのほうが頭を下に向けた水死体を表しています。これだけ水死体を表す漢字があるのは、洪水によって命を奪われる人が多く、人々が水に脅威を感じていたからでしょう。
「沈」という字のつくりは、牛、羊を表しています。これは牛や羊を生け贄として備えて、川の神様の怒りを鎮める様子を表しています。
最後に「決める」「決定する」という漢字です。
決断の「決」っていう字はなんで「さんずい」なんですしょうか?
「決める」ことと水がどう関係してるんでしょうか。
大雨が降り続き、水かさをます大河。ごうごうという流れは、いまにもあふれんばかりです。さきほどお話ししたように為政者にとって治水はとても大切なことでした。
「決」のつくりの「夬」の部分は「コの字型にえぐりとる様」を表しています。
では何をえぐりとるか。堤防なんです。ですから「決」は堤防を切ることを表しています。大洪水のときに堤防の一部分を切って、そこから川の水を流し、氾濫を防ぐ。
これは大きな決断です。いつ切るか、どこを切るか。さらに言えば、多くを救うために、誰を犠牲にするのか。最近は「決」が軽くつかわれているように思いますが、本来「決」にこめられた意味は、とても重いのです。
日本でも毎年のように豪雨災害が発生するようになりました。気候危機とも言われています。これをいかに抑制していくか、いかに適応していくかということが、現代の政治家に求められています。