動画・知っ得水コラム「本当は怖い水の漢字」1

白川静さんというすばらしい漢字学者が「大辞林」という辞書の中で漢字の成り立ちを解説しています。そのなかで水に関係する文字を読んでいましたら、驚くような内容がありましたので紹介したいと思います。

最初はこの漢字です。「需」です。

需要と供給の需要の需、必需品の需。なくてはならないものという意味です。

これがどう水と関係しているのか。
上の部分は、雨ですね。そして下の部分。これは「しこうして」と読みますが、これは何を意味しているのか。
じつは、これは日照りが続き、雨乞いするときの古代の王様の姿です。 雨乞いの儀式のときの髪型です。
古代の王様は、聖職者、呪術を使い神様とコミュニケーションできる存在として、自分の権威を保っていました。 日照りが続くと農業ができなくなり、生活できなくなりますから、王様が神様にどうか雨を降らせ給えとお祈りするわけです。そのときの様子を表しているのが「需」という漢字なんですね。

さて、それに関連しているのが、この激しいという漢字です。

この激しいという漢字のなかに「白」がありますね。この白はいったい何を表しているのでしょうか。じつは「白骨」「どくろ」を表しています。古代の王様は白骨化したドクロを叩いて、自分の祈りのパワーを高めました。

さて、王様の「雨を降らせて欲しい」という願いが神様に聞き入れられた状態が「濡れる」という漢字です。さっきの雨乞いをしている王様に「さんずい」がついて、雨が降ってきたことを表しています。王様の権威は保たれ、人民の信頼はいっそうあつくなったことでしょう。

ところが王様が祈ってもいっこうに雨が降らないということもありました。そんなとき王様はどうなったか。

それを表しているのが「嘆」という漢字です。雨が降るように神様にお願いしていた王様が縛られて、下から火で焼かれています。このように聖職者を焚いて、神に祈ることは古代社会では多く行われていました。古代の王様は呪術師として最後は自らが犠牲として殺される運命にありました。だからなりてがいない時期もあったそうです。

もし現代の政治家だったらどうでしょうか。地球温暖化が進み、温度が上がると水の動きは激しくなります。水のすくない地域は干ばつになりやすく、水の多い地域では非常に多くの雨が降るようになります。何ヶ月も雨がまったく降らなかった地域が、いきなり洪水に襲われることもあります。

「激」という文字のなかの「白」は「しゃれこうべ」を表しているとお話ししました。水の動き激しくした現代の「しゃれこうべ」は何だったのか。それは人間の生産活動です。経済成長こそがすべてであるという短絡的な思考です。生産活動によって排出された温暖化ガスが水循環を早めたのです。激しくなった水循環を戻すには、生産活動を考え直さなくてなりません。

アクアスフィア・水教育研究所