台湾の金門島に中国から送水開始の意味
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金門島に中国側から送水が開始されました。
これには政治的な意味合いが強いとされています。
しかしながら、水問題はやはりローカルな視点が大切です。
金門島は台湾領内の島ですが、位置的には中国に近い。
いちばん近いところで約2キロほどです。
かつては軍事拠点であり、その痕跡は現在も残りますが、近年は中国と台湾の交流拠点となり、中国からの観光客で賑わっています。
そこに中国から水が送られることになりました。
金門島の年間降水量は1000ミリ程度。地下水はありますが、酒造などの産業に使われています。
人口は5万人程度ですが、軍や観光客10万人を支える水が必要で、水不足になっています。
そこで福建省からパイプラインで水を送り、ため池に貯水されています。
他国の水に頼るようになると安全保障上問題になります。
たとえば、マレーシアとシンガポールのような関係になることがあります。
では、金門島と中国の場合はどうなのか。
中国からの観光客の増加が水不足の原因なので、関係が冷えて観光客が減れば、水不足の問題は解消されるという見方もできます。
また、金門島の人々の気持ちは、台湾よりも中国に近いという人も多く、中国から水を送られることにあまり抵抗はないようです。
ですが、問題がまったくないかというとそんなことはありません。
まず、送る側の福建省は水が不足していて、相当に無理をして送っていること。
送られた側の金門島のため池からは、猛暑によって大量の水が蒸発してしまっていること。金門島では使える水が増えたので、節水意識が薄れているという声も聞きます。
水を移動させるというのは、なかなか難しいことです。