なぜ文明は大河の近くで誕生したか
人間が集落を発展させ、大きな都市つくり始めたのは、いまから約8000年前と考えられている。
とくに紀元前3000年から紀元前2000年にかけて、メソポタミア、エジプト、インダス、中国の4つの文明が生まれた。
これらをまとめて「世界四大文明」とよぶ。
どれも大河の近くで誕生したことに由来して、「世界四大河文明」とよぶこともある。
メソポタミア文明は、チグリス川とユーフラテス川にはさまれた場所で発展した。
現在のイラクにあたる地域である。
豊かな土地に野生の麦がはえ、人びとはそれを育てながらくらした。
エジプト文明は、ナイル川下流域の土地にさかえた。
もともとエジプトは、雨が少なく気温も高い、気候のきびしい地域である。
しかし、ナイル川が毎年おこす洪水によって、川そいの土地に養分をふくんだ土がもたらされ、人びとは農耕によって収穫をえることができた。
インダス文明は、インダス川の流域で発展した。
現在のパキスタンとインドにまたがる地域である。
人びとは、豊かな土地を利用して作物をつくりながらくらしていた。
中国文明は、黄河、長江という2つの川のほとりで発展した。
黄河のまわりではヒエやアワを、長江のまわりでは米をつくりながら、人びとは暮らしていた。
では、なぜ文明は川の近くで誕生したのだろうか。
川の周囲の土は養分を多くふくみ、作物を育てるのに適している。
また、くらしに使う水を手に入れるにも水辺が便利だ。
飲み水はもちろん人びとが衛生的な暮らしを保つのに必要な大量の水を確保することもできた。
遠くの町へいったり、ものをはこんだりするにも川が便利だった。
船を川にうかべれば、重い荷物でも、大量にはこぶことができる。
同時に学問も発達した。
治水や灌漑の技術、水を管理する法律、農作業の時期を知るための天文・暦法など。
水辺での便利な生活を享受する術を身につけながら、人間社会は大きく発展したのである。