<水の科学3>水は比熱容量が大きい
1g の物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量を比熱容量といいます。
水は、この比熱容量が他の物質に比べて非常に大きいという性質を持ちます。
通常の温度範囲では、水は液体の中で最大の比熱の値をもっています。
比熱容量の大きい物質は温まりにくく冷めにくく、逆に、比熱容量の小さい物質は温まりやすく冷めやすいといえま
す。
ですから、水は温めるのに大きな熱量を必要としますが、いったん温まると冷めにくいという性質をもっているのです。
この性質は私たちの生活に大きく影響しています。
たとえば、海辺の土地が内陸の土地より1日の気温差が少ないのはなぜでしょう。
陸地は日光に照らされるとすぐに温度が上がります。陸地の大気も陸地に熱せられて温まります。一方、水は陸地の土壌を構成する物質にくらべ比熱容量が大きいために海水の温度はなかなか上がらず、海洋の大気の温度もなかなか上がりません。
陸地の大気は海洋の大気より温度が高くなり、海から陸への「空気の対流移動」が起きます。この風を、海から陸へ吹くので「海風」といいます。
やがて太陽が沈むと、陸地の温度は急速に下がり、陸地の大気の温度も下がります。しかしながら、海水の温度は急に下がりません。海面上の大気も温度が下がりません。
海洋の大気は陸地の大気より温度が高くなり、陸から海への「空気の対流移動」が起きます。この風を、陸から海へ吹くので「陸風」といいます。
この海風、陸風のために海辺は1 日の気温差が少ないのです。一方内陸部は、海風、陸風が吹かないので、昼間は温度が高く、夜間は温度が下がり、日中と夜間の気温差が大きくなります。
水の比熱容量の大きさは、地球全体の気候の穏やかさにも関係しています。水が地球表面の約70%を占めていることから、昼と夜、夏と冬の気温の変化が穏やかなものになっているのです。
私たちが一定の体温を保つことができるのもこのためです。人間の体は、成人の場合、約60%が水です。
体のなかの水の割合は年齢によって変わりますが、体温が一定に保たれているのは、体のなかに温まりにくく、冷めにくい水がたくさん含まれているからです。