水平思考クイズをつかって地域の水問題とSDGsを考える

 橋本淳司(水ジャーナリスト/aqua-sphere編集長)が三島北高の1年生に対し、「地域の水問題とSDGs入門」というワークショップを行いました。

 学校からは「グループでの対話がある授業」、「楽しめる授業」という要望があったので、水平思考クイズを行いました。

 水平思考(Lateral thinking)は、問題解決のために、既成の理論や概念にとらわれずアイデアを生み出す方法です。

 水問題を把握するには論理的に深堀すると同時に、水平的に考えると全容把握や解決策が見出しやすいのではないかと感じています。

 まず、ウォーミングアップの<1問目>です。

<第1問>ある男がレストランに入り、店員に「水をください!」と言うと、その店員は男に銃を突きつけた。すると、その男は「ありがとうございました」といってレストランを去った。なぜ?

 これについて隠れたストーリーをあぶり出します。その方法とは、

 1)グループで質問を考える(質問はYesかNoで答えられものとする)

 2)質問タイム(生徒が私に質問する時間)

 3)個人で隠れたストーリーをメモに書く

 4)全体で共有する

<1問目の隠れたストーリー>男はしゃっくりが止まらず困っていた。レストランに入り、しゃっくりを止めるために「水」を貰おうとしていた。そのことを察した店員は、男のしゃっくりを止めようと驚かせるために急に銃を突きつけた。おかげで男のしゃっくりはおさまった。

 要領をつかんだら2問目です。

<第2問>ある村は昨年夏に大洪水に見舞われた。その冬から村人たちは積極的に薪ストーブをつかうようになった。なぜ?

1問目と同じ手法で展開しますが、以下のように隠れたストーリーに関連するSDGs目標を伝える時間をつくります。

1)グループで質問を考える(質問はYesかNoで答えられものとする)

2)質問タイム

3)SDGs関連項目について触れる(ここでは12(つくる責任、つかう責任)、13(気候変動に具体的な対策を)、15(陸の豊かさを守ろう)。生徒にはSDGs目標の一覧を渡してあり、それを見ながら考えます。

4)さらに質問タイム

5)個人で隠れたストーリーをメモに書く

6)全体で共有する

<2問目の隠れたストーリー>

 村の洪水被害が大きくなった背景に、スギとヒノキの放置人工林の存在があった。日本で1年間に使う木材の容積は約1億?だが、そのうちの80%が外国産。その陰で、国産材の価格は低迷し、間伐や枝打ちなど手入れが行き届かない人工林が急増した。村では適度な間伐を行い、切った木を放置せず、エネルギーとして利用することにした。

 薪ストーブと流木との関係までわかったクラス、さらにその先の森の手入れ、間伐材の活用まで気づいたクラスとの差がでました。

<3問目>船宿のおかみさんが魚をさばくと、あるものがお腹から出てきた。おかみさんたちは釣り客向けに「マイ弁当・マイ水筒キャンペーン」をはじめた。なぜ?

 2問目と同じ流れです。SDGs関連項目は12(つくる責任、つかう責任)、14(陸の豊かさを守ろう)です。

<3問目の隠れたストーリー>

おかみさんが魚のおなかから見つけたものはマイクロプラスチックだった。マイクロプラスチックは捨てられたレジ袋やペットボトルなどが川に流れ、海に至る過程でつくられる。おかみさんたちは、釣り人が飲み終わったペットボトルやコンビニのレジ袋を捨てるのが気になっていた。そこで「マイ弁当・マイ水筒キャンペーン」をはじめた。

 魚のおなかから出てきたものがゴミであることにはすべてのクラスがたどり着きましたが、魚の大きさやゴミの大きさに関する質問は上がらず、マイクロプロスティックには到達できませんでした。

 生徒たちは、活発に質問し、お互いのユニークな意見に耳を傾けていました。