<水の科学16>ミネラルウォーターと水道水
ミネラルウォーターは無機物が溶けた水
ミネラルウォーターとは、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどの無機物(ミネラル分)が溶けた水のことです。
2011 年の東日本大震災、各地の浄水場から放射性物質が検出されたとき、「赤ちゃんのミルクをペットボトル水でつくってはいけない」という噂が広まりました。
粉ミルクメーカーが「ペットボトル水での調乳はやめてください」「ペットボトル水には無機塩類(ミネラル)が多量に含まれているため、赤ちゃんに負担をかけてしまう場合があります」というメッセージを発したためです。
硬水に多く含まれているマグネシウムは下剤の成分として腸を刺激します。赤ちゃんは胃や腸などの内臓の発達が未熟なため、下痢を起こしてしまいます。
ですが実際には、「硬度の高い水の使用がダメ」なのであって、硬度が低ければペットボトル水でも大丈夫です。国産のペットボトル水の使用をすすめる声もありましたが、輸入ペットボトル水のなかにも硬度の低い水はあります。
そもそも硬度とは、水1ℓのなかに溶け込んでいるカルシウム、マグネシウムの合計量を表わしたもので、ペットボトル水の成分表示表に記されています。
この数値が高いものが硬水で、低いものを軟水です。ただし基準はまちまちで、
WHO(世界保健機関)では、
◉軟水 0〜60 (mg/ℓ)
◉中程度の軟水 60 〜120
◉硬水 120 〜180
◉非常な硬水 180 以上
日本の基準では、
◉軟水 100 未満
◉中硬水 100 〜300
◉硬水 300 以上
とされています。「赤ちゃんのミルクをつくるなら硬度60 以下の水」といっていた人はWHO のものさしを、「硬度100 以下の水」といっていた人は日本のものさしを使っていたのでしょう。
水の硬度は湧き出す土壌に関係しています。
たとえば、フランスの土壌の多くは堆積岩でカルシウムとマグネシウムを多く含んでいます。加えて土地の高低差があまりないために、地下水がゆっくり地中を流れ、その間にミネラル分を溶かします。
一方、火山国である日本の土壌は火成岩で形成され、また山から海岸までの傾斜が大きいため、地下水が流れる速度も速く、ミネラルが溶けにくいのです。このためフランスの水の多くは硬度が高く、日本の水の多くは硬度が低くなります。
また、最近では発泡性(ガス入り)ミネラルウォーターも売られています。天然の発泡性ミネラルウォーターは地中で水のなかに二酸化炭素が溶けたものですが、販売されている多くは、人工的に二酸化炭素を溶かしたものです。
マグネシウム、カルシウム、カリウムなどの固体は、水の温度が高いほどよく溶けます。
反対に酸素や二酸化炭素は温度が低いほどよく溶けます。ペットボトルに入った炭酸水のキャップを締め忘れると、刺激のない味になります。それは水のなかから二酸化炭素が抜けてしまったからです。
地形と水の硬度(硬水と軟水)