<水の科学16>ミネラルウォーターと水道水

ミネラルは必須条件ではない

 農林水産省の「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」によると日本のミネラルウォーターは「ナチュラルウォーター」「ナチュラルミネラルウォーター」「ミネラルウォーター」「ボトルドウォーター」の4種類に分けられています。

❶ナチュラルウォーター……特定の水源から取水した地下水を、加熱やろ過で殺菌や除菌をしたもの。自然水ではあるがミネラル成分はほとんど含まれていない。

❷ナチュラルミネラルウォーター……ナチュラルウォーターのうちミネラルが地下で自然に溶け込んだもの

❸ミネラルウォーター……ナチュラルミネラルウォーターと同じ地下水を、加熱やろ過で殺菌や除菌をした後、複数の地下水を混ぜたり、人工的にミネラルに加えたもの

❹ボトルドウォーター……水道水や河川水、蒸留水、純水などの飲用に適した水を原料としたもの

 また、主な殺菌方法には以下の4つがあります。

❶無殺菌ミネラルウォーター……加熱処理をはじめとするいかなる殺菌処理も、フィルターによる除菌処理もせず、地下の水源から汲み上げたそのままを、空気に触れることなくボトリングしているもの。ヨーロッパで製造されているすべての「ナチュラルミネラルウォーター」がこれに当たる。

❷フィルター除菌ミネラルウォーター……加熱などの殺菌処理はしていないが、セラミックや中空糸膜などのろ過フィルターで除菌処理したもの。有害な雑菌を取り除いてあるのはもちろん、非加熱であるため、水に含まれるミネラルが減少したり、水のおいしさの要素である酸素や炭酸ガスが失われることがなく、自然に近いおいしさが味わえる。ただし雑菌と同時に人体に有益な生菌も除菌される。

❸非加熱殺菌ミネラルウォーター……オゾン殺菌や紫外線殺菌といった非加熱の殺菌処理をしているもの。日本のメーカーでは使用しているところは少ないが、アメリカではこれらの殺菌方法がポピュラー。

❹加熱殺菌ミネラルウォーター……日本の食品衛生法にある「85 度で30 分以上加熱するか、それと同等の熱量を加えたもの」という定めに従って殺菌したもの。安全面では最も確実な方法だが、微量ではあるが水の中の酸素や二酸化炭素が失われ、ミネラル分が減少、変質する可能性がある。

 ヨーロッパでは無殺菌・無除菌が原則ですが、日本やアメリカでは、水を加熱殺菌、もしくは同じくらい効力のある方法で殺菌または除菌ろ過することとされています。

 

水道水とペットボトル水の製造基準

 ペットボトル水のほうが水道水よりも安全だと思っている人は多いのですが、水道水とペットボトル水は根本的に考え方が違います。ミネラルウォーターの製造基準を定めているのは食品衛生法。清涼飲料水という大分類の下に入っており、18 項目の水質基準項目があります。

 一方の水道水は「水質基準に関する省令」によって50 項目の水質基準項目があります。

 それぞれに共通する基準値を比較すると、鉛、ヒ素、亜鉛、ホウ素は5倍も水道水のほうが厳しく、フッ素、マンガンでも、2.5 ~4倍も水道水のほうが厳しいのです。さらにヒ素など有害な元素の含有量は、じつは硬度と比例関係にあるので硬度の高い水ほど危険性は高いものと考えられています。

 

「通読できてよくわかる水の科学」(橋本淳司/ベレ出版)より