<水の科学7>水は物質を溶かす液体

水は多くの物質を溶かす

 水はさまざまな物質を溶かす液体です。海水には自然界に存在する92 種類のすべての元素が溶けています。

 物質が水に溶けるとは、どういうことでしょうか。

 それは、水に溶かす物質(溶質)が、水分子のなかに均一に混じり合うことです。水分子と溶質が強く引き合っていることが多い。

 身近な例で考えてみましょう。

 食塩水とは、食塩という溶質が水に溶けたものです。砂糖水とは砂糖という溶質が水に溶けたものです。塩や砂糖を水に入れてかきまわすと、そのうち目に見えなくなってしまいます。どうして塩や砂糖は見えなくなったのでしょうか。

 まず、塩が水に溶ける過程を見ていきましょう。塩の分子(塩化ナトリウム)が水に入ります。塩化ナトリウムはイオン結晶といって、クーロン力(静電気力)でイオンが結合してできた物質の1 つです。

 イオン結晶に水分子が近づくと、表面にある陽イオンには水分子の負電荷をもった酸素の部分が引きつけられ、陰イオンには水分子の正電荷をもった水素の部分が引き付けられます。その結果、イオン結晶を構成している表面のイオンは、結晶との結合力が弱くなり、ついにはイオン結合が切れて、水のなかに引き込まれます。

 塩が水の中に入ると、陽イオンであるナトリウムイオンは水分子の負電荷をもった酸素によって、マイナスの塩化物イオンは水分子の正電荷をもった水素によって引き剥がされるように水の中に溶けていきます。このような順序ですっかり溶けるので、見えなくなります。

 砂糖の分子(グルコースC 6 H 12O6 )の溶け方は、塩の分子とは異なります。

 グルコースは水の中でイオンにはなりません。電離しないまま水に溶解します。

 その理由は、水分子によく似た部分をもっているからです。それはヒドロキシ基-OH と呼ばれる部分です。このような部分を親水基といい、親水基を多くもつ分子ほど水に溶けやすくなります。

 大雑把にいうと、似たものどうしは溶け合うことが多いのです。人間でいえば似た性格といえますが、分子の世界では極性や分子構造などが類似していることです。