<水の科学20>地球型惑星の水の起源

 地球は46 億年の歴史をもっています。

 地球は微惑星といわれる直径10kmほどの小天体の無数の衝突によってつくられたとされています。

 微惑星が衝突すると、物質は瞬間的に押しつぶされて爆発し、物質に含まれていた揮発性分は蒸発します。そのとき微惑星がもっていたエネルギーは地表で解放されます。

 微惑星のなかには、二酸化炭素や水・窒素等のガスが含まれています。

 そのなかで特に多いのは水蒸気です。水蒸気と二酸化炭素は温室効果ガスです。

 微惑星が衝突するとき、これらのガスは飛び散り、原始地球の引力によって地球のまわりにとどまります。

 これが大気の原型となりました。この大気の中に水蒸気が集まり雲をつくりました。

 この水蒸気がやがて雨粒となり、地表にとどくようになります。雨が熱い地球を急激に冷やし、気温を下げるとともに、原子の海を形成していきました。

 じつは火星にも水があり、その起源は地球と同じもののようです。2013 年3 月、NASA は、火星に水が流れていた痕跡があり、生命(微生物)が存在可能な時期があったと発表しました。

 さらに、含水鉱物の存在も確認しています。現在の火星には液体の水はありませんが、かつては表層に液体の水が存在しうるほど、温暖で湿潤な惑星であったと考えられています。

 火星は約30 億年より古い地質体を中心に、多くの水の流れた痕跡が確認されています。

 では、その水はどこから来たのか。東京工業大学の臼井寛裕助教らの研究グループは、2014 年、火星の「初生水(火星誕生時に火星内部に取り込まれた水)」の高精度水素同位体分析に世界で初めて成功しました。

 共通の起源をもつ物質の水素同位体比は、形態が変わったり、移動したりしても、共通のトレンドにのるという性質をもっています。

 だからこの値は、物質の起源を探るうえでとても重要です。研究の結果、火星の初生的水の水素同位体は、地球のそれと同様の値を示しました。

 これによって、地球と火星の水が、似通った太陽系小天体を起源とすることがわかったのです。

 火星や地球の水の起源となった太陽系小天体は、これまで太陽系外縁を起源とする彗星と推察されてきましたが、火星‒木星軌道間に位置する小惑星であることも同時に明らかになりました。

 地球型惑星の水の起源が明らかになることによって、私たちの生命の起源について、新たに何かわかるかもしれません。

「通読できてよくわかる水の科学」(橋本淳司/ベレ出版)より

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