アメリカではじまった「ワン・ウォーター」という取り組み
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アメリカでは現在、2100万人が安全基準を満たさない水道水を使っています。
これは米国環境保護庁の報告書を元に、研究者が調査を行った結果です。
水質違反が起きる原因は、水道インフラの老朽化と考えられています。
日本も直面している水道インフラの老朽化が、どのように水質悪化につながったのか。
ミシガン州のフリント市は、財政危機により、2011年から州の財政監督下に入りました。
14年にコスト削減の一環として、それまでデトロイト市から購入していた水道水を、近隣のフリント川からの取水に切り替えました。
しかし、その水には大腸菌が混入していました。
市は消毒用の塩素量を増やしましたが、金属腐食防止処理を行わなかったために、古い水道管に使われていた鉛が腐食して剥がれ落ち、高濃度の鉛汚染が発生しました。
これ以降、水道に対する市民の信頼は失われました。
米国民は、学者やNPOと連携しながら、独自に水質調査を行い、多くの地域で水道水の汚染が発覚しています。
そうしたなか、先進的な自治他は、水の循環を包括的に管理する「ワン・ウォーター」の概念を採用しはじめました。
多くの自治体が上下水道局の統合、内外の協業体制を構築し、農業での地下水利用や肥料流出の削減、最新技術の導入による下水発電や栄養素回収、湿地を活用した水質浄化や洪水緩和といった持続可能かつ循環型の水管理をはじめました。
水道事業のコストは、悪化した水質を改善するためのものです。
では、水質を改善するにはどうしたらよいか。
生活排水、農業排水、工業排水の汚染をなくすことです。
でも、それは水道局の管轄ではない。
というのが、これまでの考え方でした。
しかし、地域の水を保全し、使っていくには、そのような古い考え方では立ち行きません。地域・流域の水循環の最適化を図る必要があります。
日本でも水循環基本法が誕生して4年が経ちますが、法の理念に基づいたまちづくりが必要です。
米国の事例は、大いに参考になるはずです。