<水の科学26>ハリケーン・サイクロンが起こるしくみ

 海水温の高い海では、風が回転をはじめて熱帯低気圧となる現象が起きます。なかでも、とくに風の強い熱帯低気圧は、存在する地域によって次のように呼ばれています。

◉ハリケーン…北大西洋、カリブ海、メキシコ湾、東経180 度より東の北東太平洋に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が秒速約33 m以上になったもの。

◉サイクロン…ベンガル湾やアラビア海など、北インド洋に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が秒速約17 m以上になったもの。

◉台風…東経180 度より西の北西太平洋および南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が秒速約17 m以上になったもの。

 

台風のしくみ

 

 熱帯低気圧は発生するのに温かい海水を必要とします。海水温は地球温暖化によって上がるため、今後、豪雨をもたらすような強力な熱帯低気圧が増えると予測されます。

 台風は北西太平洋や南シナ海上で発生したあと、日本や中国へ向かって移動します。これまでは、北西太平洋や南シナ海の海水温は高く、台風の勢力が活発になりやすくても、日本列島の近くの海水温は低かったため、台風の勢力は衰えやすかったのです。しかし、最近は日本列島の近くの海水温も高くなり、台風の勢力が衰えないことが多くなりました。

 台風が上陸したり接近したりすると、暴風、高潮、高波などにより、樹木が倒れたり、建物が壊れたりします。また、大雨により洪水で家屋や道路が水に沈んだり、土砂崩れや地滑りが起きることもあります。

 その一方で、台風は水源にもなります。台風によって降る雨は、水を確保するうえで重要な役割をはたします。たとえば、高知県では水不足によって早明浦(さめうら)ダムの貯水率0%と、完全に枯渇したことがありました (2005 年)。しかし、台風14 号による豪雨で、わずか1 日で貯水率100% に回復しました。

 

台風・サイクロン・ハリケーンの発生と進路

 

 

 

 

「通読できてよくわかる水の科学」(橋本淳司/ベレ出版)より