<水の科学8>表面張力が大きい

 雨上がりに葉っぱについた水滴を見るとまるい形をしています。コップの水もそうです。コップに水をゆっくりと注ぎ、いっぱいの水がたまりました。

 ですが、より慎重に注ぐと、もう少し水が入ります。この状態を横から見ると、水面がコップの縁より高くなり、中央が盛り上がっています。

 水中にある水分子は、周囲から均等に引力を受けます。ですが、コップ表面の水分子は、下からは引力を受けますが、空気からはほとんど引力を受けません。不安定な状態のため、空気に接している面積をなるべく小さくし、安定した形になろうとします。空気に触れている面積が最も小さく、水にとって安定した状態が丸いかたちです。

 液体の分子は互いに引き合っていますが、液体の表面では分子は内向きの力を受ける一方、液体の内部では分子が周辺の分子から受ける力が均衡しているため、結果的に液体は表面積の小さな形つまり球になろうとします。この力が表面張力です。

液体分子相互間に働く分子間力の模式図

 

 水の表面張力は72.75 × 10 ‒3N/m で、自然界にある物質としては水銀に次いで大きいものです。

 表面張力の大きな液体は、大きな球体をつくります。

 また、細いガラス管を水につけると、水の分子同士がくっつく力よりもガラスと水の分子との間にはたらく力のほうが大きいため、水はガラス管の壁に引き寄せられてせり上がります。

 そして、この力と上昇した水の重さがつり合う位置まで水は上へ移動します。

 ガラス管が細いほど上昇した水の重さは軽くなるので、水はより高い位置まで移動していきます。

 これが毛細管現象です。身近なところでは、植物が根から水や養分を全身に運ぶ自然の力として存在します。植物は、土壌中の水に溶けた栄養分を細い根管から吸い上げ、さらに、導管と呼ばれる毛細管で高い茎の先や葉にまで吸い上げ、高い樹木として育ちます。

 それは水に溶けた栄養分を、毛細管を通じて運ぶプロセスであるとともに、酸素を吸収し、植物としての生命を維持するプロセスでもあります。

 毛細管現象は日常いろいろなところに応用されています。たとえば、万年筆は毛細管現象を使ってインクをペン先へと絶え間なく送り続けます。また、毛細管現象が起きやすいような衣料素材が開発され、汗を吸いやすい服、水を吸いやすいタオルなどがつくられています。

 

「通読できてよくわかる水の科学」(橋本淳司/ベレ出版)より